農業を知ろう

農薬を知ろう    01.04.16

食品の、安全性や安心ということについて、
自分なりの考え方を持つ為には、
まず、農薬について知ることが大切です。
ここでは、その農薬の事を、概略的にお話ししたいと思います。
尚、細かい点で間違いがあるかも知れませんが、何卒お許しください。

かつて、化学が大変もてはやされた時期がありました。
今は、化学と言う言葉自体にアレルギーを感じている人もいるほどです。
おそらくこの経験は、これから先の、バイオや、遺伝子という分野にも
共通するのではないかと思われます。

さて、その化学の成果である農薬についてですが、
農薬は、化学だけでは、ありません。天然のものも、生物も含みます。
農薬については、行政の依頼で日本農薬学会が主催する
農薬の安全性シンポジュームなど、正しい理解を求める運動が
たくさんあります。
農薬というものがどういうものかを知らなくて、うわさだけで
不安になったり、高いものを買ったりしていたのでは、
つまらないことです。
自分自身で、調べて、判断することが大切だと思います。
安心を求めて高いお金を出すのか、安全を信じるか。
自分なりの方向性を見つけ出したいものです。

農薬とは、(農薬取締法では)
「農作物を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物
又はウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤
及び農産物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤
発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」となっております。

ポストハーベスト農薬とは、(日本では農薬に含まれる)
「貯蔵、輸送中に発生する病害虫や、発芽防止等の目的で、
収穫後の農作物に使用されるあるいは使用を認められている薬剤」
です。

そのような薬剤のうち、
農薬取締法に基づき農林水産大臣の登録を受けたものだけが、農薬
として販売できます。それには、天敵(生物)も含まれます。

解りやすく言うと、
農作物を虫や動物や雑草や病気から守る為の薬や生物のことです。
腐らないように発芽をとめたり、種無しぶどうにしたりする薬も含みます。
害虫を食べたり殺したりする虫や菌(生物)も含みます。
カビを防いだり、腐らないように発芽をとめたりというような、
収穫してから使う場合も含みます。ということです。
登録されていないものは農薬として販売できません。

有機農法でよく使われている
木酢液だとか、酢酸液だとか、漢方薬などで作った液などは
農薬ではありません。(農薬としての安全性が確認されてません)
有機JASでは、病害虫防除には、定められた農薬のみ使えます。
よって、上記のものは、皮肉にも、有機JASでは、病害虫防除には
使えません。違う名目でなら使えますが・・・。

農薬の出荷量は、医薬品の1/10ほどということです。
そして、農薬の使用量は、年々減っています。

どのように役に立っているか
農産物の収量増加と、所要労働力低減の役割は非常に大きいです。
農薬なしには、りんごや、キャベツ等は、ほとんど商品になりません。
(農薬を使わない場合の減収率:りんご97%、推定被害額1500億円)
水田の草取りを全て人力にすると、日本全体で約9000億円余分に
お金がかかるそうです。
今、全く農薬を使えなければ、たちまち、食糧難になることは確かです。
もちろん形や、色艶、などの見た目のえり好みは、論外になります。

毒性について、
今日の農薬は、毒性が低くなっています。
ラットへの急性毒性の平均値(LD50 mg/kg体重)は、1999年の
よく使う農薬142種で平均すると、3434ということです。
(この場合、体重1kgの動物に3.4g投与すると、その半数が死に至る。)

ちなみに、この値、ふぐ毒0.01、ニコチン55、医薬のアスピリン1750、
食塩3750ということで、農薬の平均値は、食塩の毒性よりも少し強い
という数値です。平均値ですから、あまり意味がないかもしれませんが、
大雑把に言うとそんなレベルです。(数値が小さいほど毒性が強い)

(LD50値(mg/kg):試験動物の半数が死に至る投与量(mg)を
              体重(kg)で除した値)

なぜ、草や虫に効いて人には効かないのか(選択毒性)
退治したい特定の虫や、特定の植物だけにある機能を抑制する
効果のある薬剤を使っているものが多くなっているので、
人には影響のない物が多いのです。
例えば、光合成を妨害するとか、
毒性が弱く、少ない量で、的確に目的の病害虫だけの防除ができる
ように改良、開発が続けられています。

残留性について
残留農薬基準は、一日にこれだけの量なら一生食べ続けても
影響がない農薬の量を元に、食生活データを加味して決められており、
その測定も、農産物を洗わないで、皮ごとすりつぶして測定します。

バナナでも皮ごと測定します。世界の中ではバナナは皮ごと食べる
地域もあるということで、そのような計り方をします。
お米でも精米すると全く農薬は検出されなくなってしまいますが、
もちろん玄米のまま測定します。

外側と、皮、種子に一番農薬は残留し易いのですが、そこも含めて
測定します。実際食べる時には、洗ったり取り除く場合が多いし、
加熱によって分解さててしまうものも多いので、
食べる時の農薬の濃度は、測定値よりもはるかに低い値です。

その様な条件で測定しても、
平成9年農水省発表では、平成7年の農産物毎の検査総数254875件
の内、残留農薬が検出されたのは、0.81%で、その残留基準値を
超えているのは、22件(0.014%)です。

日本生活協同組合連合会の1994−1997年の農薬分析結果では、
291554点中、農薬が検出されたもの2241点(0.77%)で、
その基準値を超えたものは、輸入品2点、国産品1点ということです。
万一見つかってもそれほど、という言い方が丁度当てはまります。

ゴルフ場の排水では、毎年11万件程度の分析がおこなわれており
環境庁の定めた指導指針値を越えたものは、0.001〜0.007%です。

また、農地への残留性も最近の農薬は、短い期間になっています。
あまり短いと本来の効果が、持続しません。
最長でも半減期が1年で、大半は半年以下ぐらいだそうです。

ですから、有機JASの基準で、3年以上農薬を使っていないこと、と
言う決まりがありますが、1年前に農薬を使っていても、ほとんど
検出は不可能です。
自己申告制になっているのは、科学的にはチェックできないからです。

安全性について
日本の農薬の安全性は、世界でもトップクラスだそうです。
農薬を安全に使用するための仕組みの概略は、こうです。
「各農薬について、非常にお金と時間がかかる、慢性毒性試験で、
最大無作用量を求め、一日許容摂取量を計算し、
食生活データを加味して、残留農薬基準を求め、
それをクリアできる様に、安全使用基準を定めて生産者を
指導している。」ということです。

一つの農薬を作るのに、10年以上の時間と、
100億円もの経費をかけて安全性を確認するそうです。
特に、一日許容摂取量(ADI)を決める為の、慢性毒性試験には、
大変な時間と労力が、かかっています。
それだけのお金と労力と時間をかけて、安全だと解ったとき
初めて農薬として登録されます。

(ADI:一日にこれだけの量なら一生食べ続けても影響がない量mg)
(慢性毒性試験で得られる、長期動物実験での最大無作用量に、
種間差1/10、個人差1/10と仮定した、安全率1/100を掛けて、
平均体重50kgを掛けてたものが、一日許容摂取量=ADI です。
この安全率1/100が子供には、どうかと言うことで改正の方向らしい
ですが、現在は少なくとも、実験動物に対しては1/100の値です。)

そもそも、誰も農薬などは使いたくないのです。
安全とは言っても農薬を使う生産者が、一番危険なのですから。
農産物が、病害虫によって壊滅的にならないために、コスト削減、
労働力不足を補う為、仕方なく使っているのです。

過去には、DDTや、パラチオン、BHCという強い毒性と残留性のある
農薬が使われたことがあります。そんな教訓が今反映されています。
農薬は、怖いという過去の歴史やイメージがあるからこそ、それを
拭い去ろうとする大変な努力がなされています。

逆に、農薬のイメージが悪いからといって、天然のものや自然のものを
調合して自分で作った製剤には、安全性の保障はどこにもない
ということです。自然界にも怖いものはたくさんあります。

ですから先にも述べたように、
有機JASでは、病害虫防除には定められた農薬しか使えません。
いくら自然物から作ったものでも安全性が確認されていないものは
使えないということです。
木酢液などは農薬として登録しようという動きまであるとききました。
有機JASでも、薬剤の安全性は農薬に求めているということです。

安心とは、
消費者の不安を取り除く為の研究や、調査が、
国や、消費者団体や、流通業者の研究機関で、行われています。
そこで出てきている答えは、安全であると言うことです。
現状、ほとんどの農作物が、農薬を使用してますから、
今の科学で安全といえなければ、もちろん国も認可していません。

しかし、消費者の不安は、どこまで行っても、取り除けません。
未知のことに対する不安というものです。
もし、生産者が不法な農薬の使い方をしていたら、とか、
今の科学では解らないような影響があるかも、とか、
そんな不安があるのも事実です。

安心かどうかは、信頼することから始まります。
この場合、今の科学と生産者を信頼しない限り、安心は、得られません。
安心は、それぞれ自分で感じることなのです。
しかし、不安というものは、伝染病の様に人にうつってしまいます。
ですから誤解も招きやすいのです。

一人一人が自分自身の感覚で、本当の安心を感じ取り、
自分なりの方向性を見つけ出すことが一番必要だと思います。

生産者は、
農薬を全くなくすことはおそらく不可能です。食糧難も予測されてますし、
遺伝子組み替えにより、農薬を使わなくても強い品種ばかりになるとか
みんなが自給自足をするようになれば別ですが・・・。

今現在農薬を使わないと、生産者に過酷な労働を強いたり、コストが
大変かかったりしています。もちろん農産物の値段も高くなります。

でも、生産者は、消費者に良いものを、安く提供しようと大変努力
しています。本当に必要なときしか農薬を使わないよう手をかけたり
別の方法を工夫したりしています。

農薬は、減らす方向で努力されており、使用量も減っています。
しかし、農薬の代わりとして安全性の確認されていない薬のようなもの
が使われているとしたら、余計に不安になってしまいます。
自然のものから作った薬でも、安全性の確認や、使用方法の基準を
ガイドラインでも良いので、きちんと定めてほしいものです。

逆に、有機農業をしている生産者の中には、有機農産物の
差別化を図る為に、農薬を悪者扱いする人もあります。

本当に信頼できる生産者を見つける事が安心への近道だと思います。

消費者は、
海外から安い農産物が大量に輸入されています。
大多数の消費者は、価格の安い見た目の良いものに走ります。
安心はしていないのかも知れませんが、それほども気にしていません。
海外の農産物を海外で加工して輸入する形態も増えています。
もうこうなると農薬のどうのというところまで気が回りません。

逆に、気にする人も増えてはいます。
有機農産物や、減農薬農産物を、登録された一定の基準を満たす、
生産者から定期的に宅配する仕組みを使っている方も徐々に
増えているようです。
農薬や、化学肥料を悪者扱いする風潮は、マスコミを中心に、
広がっています。それに共感するかどうかは自分の判断です。

環境への影響は
難しい項目です。影響は、あると思いますが、
農業自体が、農地(自然)を酷使して生産を行う場ですから、
それに、虫や、草を、わざわざ集めているようなところもありますし、
そんな虫や草が邪魔で、農薬や、いろいろな手段で防いでいる
のですから、有機農法でも、多かれ少なかれ同じ傾向です。
しかし、長い年月の間に、そんな農業自体が自然環境の一部と
なってしまっている事も事実です。
田んぼがないと困る動物や、植物は多いです。
農薬によりそんな生態のバランスが崩れることはあったと思います。
私は、環境という言葉自体が、人を中心にした考え方だと
思ってますので、どういう環境が最適な環境なのか深く認識
できてません。そういうことで、このことについてはなんともいえません。

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私の知りえる、農薬についての概略は、こんなところです。

まとめると
日本の農薬は、安全性を確保するのに気の遠くなるような努力が
なされている。その結果、農薬を使った農産物は、安全といえます。
また、農薬の収量増加と、所要労働力低減の功績は大変大きい。
よって、一概に農薬は悪いと決していえる物ではありません。
しかし、未知のものに対する不安をぬぐいきれない人もたくさんいます。
そんな不安は、伝染もしますので誤解を招きやすいのです。
一人一人が自分自身の感覚で、本当の安心を感じ取り、
自分なりの方向性を見つけ出すことが一番必要だと思います。

長々とお読みいただき有難うございました。
ご理解いただけましたでしょうか?
逆に余計に解らなくなったかたも見えるかもしれませんが、
さらに細かいことや、具体的なことは、ご自分でお調べください。
私は、農薬や、農業や、消費者に関する、団体に所属している
わけではありません。食に関心のある一般の一消費者であります。

尚、日本農薬学会主催、県後援の、農薬と環境と安全性シンポジューム
(市民講座)、有機JAS説明会、その他の内容を参考にいたしました。


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